1899年に書かれた新渡戸稲造の武士道
広島に戻る新幹線の中で時間があったので、かねてから気になってた新渡戸稲造の武士道
武士道―人に勝ち、自分に克つ強靭な精神力を鍛える 知的生きかた文庫
- 作者: 新渡戸稲造,奈良本辰也
- 出版社/メーカー: 三笠書房
- 発売日: 1993/01
- メディア: 文庫
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内容部分としては、「義」「勇」「仁」「礼」「誠」「名誉」「忠義」これら7つに重点が置かれておりひとつひとつ解説されています。その中でも柱に置かれているのが「義」の概念で、正義の道理や義理という言葉でしっかりと説明されており感銘を受けました。思えば時代劇の中に出てくるすべての武士がこの「義」を価値観の中心において行動しているような気がします。あとこの本の最後では、功利主義や唯物思想によってこの武士道という日本人が持つ道徳観念が消えつつあるというのが由々しき事態である書かれていて、道徳やマナーがなくなって久しい現代の自分からしてみれば、100年以上前に日本の事を心配している新渡戸稲造は偉大だと感じました。
自分的には、武士道の持つ日本独特の倫理、卑怯を憎む正義の心や、名誉や恥に対する心は非常にすばらしいものだと思いました。それは特に「義」「仁」「礼」「誠」などに表れていると思います。しかしながら、武士道では
- 数学を教えず、論理的合理による決断を嫌う点
- 金銭的なものも含めた損得勘定をするのを良しとしない点
- 知行合一でない知識、つまり情報を軽んじる点
- 感情を決して顔に出してはいけないコミュニケーションを奨励する点
これらだけは、現代の時代に適応できないものと言えるでしょう。高度な科学技術発展による高度通信と多価値観でのコミュニケーションをする現代において、これらの4つだけは改良の余地があるのかなと思います。というより、この考えのままだと競争に対して悲しいほど無力です。おそらく、1900年前半の日本人はそれらに気づき武士道を改良して行ったのだと思います。
今回、この本を読んで非常に勉強になりました。現代のものからも、過去のものからも良い要素を引き出して現代に新たなものを打ち立てるのが現代人の定めだとすれば、こういう道徳倫理を復活させるのは良い社会作りのために必須なのではと思います。例の国家の品格はそういう意味で的を得ていますね。これを機会にいろいろ古典の世界に足を伸ばしてみようと思います。
ちなみに今日の写真は自分の故郷の写真です。