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sifue's blog

プログラマな二児の父の日常

テレビはインターネットがなぜ嫌いなのか

テレビはインターネットがなぜ嫌いなのか

テレビはインターネットがなぜ嫌いなのか

最近修士論文を書くために論文ばかりを読む生活です。研究室に引きこもってます。それでもたまに日本語が読みたくなってAmazonで注文しちゃったのがこの本、テレビ業界本としてはかなり面白い内容でした。
目次は以下。

序章 50年かけて密かに築いた"おいしいビジネス"
第1章 NTTが映像インフラを支配する
第2章 キー局の帝国が崩壊する
第3章 巨人NHKが民放を蹴散らす
第4章 テレビ画面がネットに乗っ取られる
第5章 娯楽メディアの王座から没落する
第6章 下請け番組制作会社の逆襲が始まる
第7章 放送免許が紙くずになる

自分自身いろいろ読んでみて一番勉強になったのは、とにかく日本のテレビ事情というのは世界でまれに見る異常事態ということがわかったことでした。
例をあげると

  • 民放テレビ局が新聞社と資本関係にあり、相互批判不能で、言論の自由が妨げられた状態である事―民放が打ち出す何らかの至上主義には新聞もラジオも賛同し、お祭り騒ぎを引き起こせる
  • 日本の民放は、公共の電波を使っているにも関わらず、富を集め、視聴率をとることばかりに専念し、視聴率の取れる娯楽番組ばかりを流している事―自称38%という構成だが実態は60-70%
  • 公共の全国電波に流すことを条件に、日本のクリエイターから著作権を買い取ったコンテンツを一度しか流さず、あえてそれを死蔵させることによってその価値を異常に吊り上げている事―アメリカなどではテレビ局よりもハリウッドの番組制作会社が強い力を持つ

こういう構造などを明確に書いてくれていて非常に勉強になりました。
放送免許を元にこういう富を集めるシステムを作った民放キー局の開始者はすごい才能があったということでしょう。しかもこの体制が50年以上も続いていており、テレビ局に富を集めるという構造を維持できるように、著作権を絡めたかなり多くのシミュレーションを組んで先手を打っていたのではないでしょうか。ここに来て構造を紐解いてみれば、それがどれだけ良くできた金儲けのシステムか良くわかります。ビルゲイツがOSを支配すればコンピューター市場を支配できると踏んで、今の体制を作ったのと同じぐらいよくできた戦略論があったんでしょうね。
ちなみに本の内容自体は、そのよく富を集めるシステムが、インターネット(ブロードバンド)という技術的イノベーションによってだんだん穴を空けられてきたよ、という話です。今までどうやってテレビ局が富を集めてきたかを理解しない限り、日本において放送と通信の融合は様々な衝突を生むという内容でした。新しい娯楽メディアとなりうるインターネットメディア形成までの生みの苦しみが、どういうものか書いた本と言ってもいいのかもしれません。
今の民放テレビ局のビジネスのシステムがわかる良書です。オススメです。
 
以下に読んでいてトリビアになりそうな部分を書き出しておきます。

  • 最近テレビでの広告効果が薄らいできている。―実際アンケートではどのメディアで会社を知ったかは、ネットとテレビが並ぶほど
  • 芸能プロは、所属タレントをネットに登場させることをいとわなくなってきた。―ジャニーズのようなネットアレルギー体質プロを除き、ブログを書かせたり、有料コンテンツ販売をするプロが出てきた。
  • テレビ局も万が一のためのリスクヘッジにネット進出をしはじめた。―テレビ局でネット脅威論が実体化しはじめた。
  • CM広告収入が減り始めているので、映画事業やイベント事業に進出しはじめた。
  • 人気番組がネットで流れることはまずない。―人気コンテンツの価値を死蔵させることで吊り上げるため。
  • テレビ業界にとって地上波デジタル放送のための電波塔(東京タワー等)はインフラ競争を勝つための要所
  • 高い視聴率を維持するために、テレビ局はブロードバンドで自社番組を流したくない。
  • アメリカでは地上波アナログ放送をケーブルテレビにゆだねたために、テレビ局の力が弱くなった―インフラを握れないとテレビ局は弱くなる。アメリカは今ではテレビ局は国の保護を受けるほど。
  • 今のネットとテレビの関係は、昔のテレビと映画の関係に似ている。―昔も映画有力五社が協定を結んで映画スターをテレビに出さないなどの対抗策を打っていた。
  • 下請け番組制作会社は全国電波に番組を放送してもらう変わりに、著作権・窓口業務権をテレビ局に帰属させてしまい自分で商売できなかったが、最近ネットで儲ける番組制作会社が出てきた。―テレビ局で自社でコンテンツを作る力があるのはフジテレビぐらい。他のキー局・地方局は番組制作能力が他社外注がほとんどで、作り手としてのテレビ局が危うくなってきている。
  • 番組制作の実態は、現場に名ばかりのプロデューサーがテレビ局から来て、実際は何もしていない。しかし著作権は彼らのものになる。―製作過程と著作権の所在の大きな食い違い。著作権の意味がわからなくなってきている。
  • ハリウッドでのドラマの制作費は一話6億円、日本では1日の放送分の制作費が3億円。―日本では製作規模にかせがかけられている。
  • アメリカのコンテンツ市場は、GDP(国民総生産)の4%、日本では2%。―日本ではクリエイターに自由な商売が認められない現状がある。

 
とこんな感じです。この11月に出た本ですが非常に勉強になる本だなと感じました。
あと関連ブログも紹介です。
番組制作会社の労働条件は悲惨
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2005/09/post_3f6c.html
やっぱりクリエイターが報われない日本なんですね。